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私の視点 元厚生官僚暗殺事件に想う

 厚生行政の事務方トップを務めた二人の自宅が連続して襲撃されて死傷者が出た事件は、閉塞状況の中でますます我々を暗澹たる気持ちにさせてしまう。

 私はお二人と個人的な面識はなく、人柄などはマスコミ報道で得られるものでしかないから「個人的な事情による犯行」の可能性については、全く分からない。

 ただ、状況証拠から大方が推察する「テロ」の可能性については否定できない。と言うか、その可能性は高い。

 今のところ、二つの事件に関連性がある「連続暗殺計画」との見方が有力だが、不可思議に思えてならない部分がある。それは、通常この種の連続して行なわれるテロは、捜査機関が本格的に態勢を整える前に遂行するものだ。それが今回の場合、最初の事件から次の事件までの間に時間がありすぎる点だ。これは、実行犯(グループ)が警察を相手に大胆な「劇場型犯罪」にしようと企てているようにも見える。

 山口夫妻の死亡推定時刻は発表されていないが、近所の住人の18日夜に山口氏宅で「男の声で言い争っていた」との証言がある。これが事実だとすると、二つの事件の間には24時間近くの時間差があったことになる。もし仮にそうでなくても、山口夫妻の死体が発見されてから吉岡氏の自宅が襲撃されるまでに8時間が経過している。

 二つの事件が同一の組織によるものであるとするなら、ほぼ同時に実行していたはずだ。この警察をからかうような犯行から「グリコ・森永事件」を想起した人も少なくないだろう。

 一方、警察の動きだが、警察の対応にも生ぬるさ、危機意識の欠如を見る。

 厚生労働省への不満が全国を覆っている時だ。特に年金への恨みつらみは未曾有のエネルギーを孕(はら)んでいる。失礼ながら「年金のスペシャリスト」として知られていた山口氏が恨まれても仕方がない理由は十分にある。その山口氏が殺害されたのだから、捜査当局は個人的な怨恨の線だけでなく、暗殺の可能性も考えて事件発覚直後から「次の事件」の予防態勢を整えるべきだったのだ。

 これは、二番目の事件が起きたから言うのではない。危機管理の分野では「当然」の部類に入る想定だ。その想定に基づいて警戒していれば、吉岡氏の奥さんが襲われることを未然に防げたかもしれない。

 繰り返しになるが、危機管理に於いて「次の事件の予防」態勢を敷くのは必須である。そんな基本中の基本が日本の警察は出来ないのかと私は驚いた。つまりは、山口氏夫妻の殺害が発覚した時点で、何故警視庁は山口氏のかつての上司で「年金のプロ」として共に仕事をしていた吉原氏周辺の警護をしなかったのか、私は理解に苦しむ。

 その辺りの事情は後日判明してくるであろうが、今後に是が非でも活かして再発防止に努めてもらいたいものだ。

 捜査当局の対応とは別に、この事件のネット上の反応を見てみようと、様々なサイトへの書き込みを読んでみた。

 年金問題への恨みもあるだろう。被害者への度を越した表現が目立つが、それは絶対にするべきではない。そんなに不満であるのなら厚生労働省や社会保険事務所に直接抗議に行けばいいこと。それをしないで、人の死に乗じて、それも匿名を良い事に鬱憤晴らしをする行為なんぞは、愚の骨頂だ。

 今回の事件を色々考えているうち、戦前の「暗闇の時代」に思い至った。

 明治維新以降、日本では要人の暗殺が頻発した。昭和に入るとさらにそれが加速していった。また、1929年の金融恐慌が長期にわたって国民を苦しめると、それがまたさらに後押しするかのように多くの暗い事件が起きた。

 二・二六事件などもその一つだ。そこから軍部にたまっていた不満やエネルギーは、行き先を海外に求めて侵略へと導かれていったのだが、当時は軍人によって政治家が狙われることが多かった。その背景には、当時は政治家の権限が強く、特定の政治家を殺せば、政治が変わるという思い込みが軍人の間に強く存在したと思われる。

 だが、当時に比べれば、事の善悪は別にして、政治家の指導力・影響力は格段に弱くなっている。そう。「おバカな政治家」をあざ笑うかのように官僚が実権を握り、日本を動かしているのだ。だから、今日ではテロの標的は、政治家よりも官僚に移行した可能性もある。

 今回の事件がそういう観点から起こされた暗殺計画だとの有力な判断材料は今のところないが、いずれにしても嫌な予兆が色々と感じられる事件である。事件の早期解明を願うばかりだ。

 どんな事情があろうとも、暴力がものを言う世の中にしてはならない。また、軍人が政治に口出しをすることも許してはならない。先日も田母神空幕長の更迭問題が世の中を騒がせたが、その時の彼の開き直った態度を見ていると、「文民統制」に危険信号が点り始めた気がしてならなかった。

 そんな「官僚や政治家への不満」と「自衛隊の暴走」という二つの動きが共に同じ方向を向いて動き出せば、「いつか来た道」は現実のものとなる。そうならないためにも、われわれ一人一人が「政治」を自分たちのものとして真剣に考えて積極的に参加していかなければならない。さもなくば、後世に禍根を残すことになるだろう。 

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